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第5章 生活支援技術 ・ レッスン5-1

移動と移乗の介助とは?抱え上げずに双方の負担を減らす

約4分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

ベッドから車いすへの移乗。力のある職員が一人で抱え上げるのと、道具を使うのと、どちらが安全だと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

01原則として、人の力で抱え上げない

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、全介助が必要な人にはリフト等を積極的に使い、原則として人力による人の抱上げは行わせないとしています。

指針は平成25年6月18日に改訂され、対象が福祉・医療分野などの介護・看護作業全般に広がりました。移乗介助、入浴介助、排泄介助での抱上げは、働く人の腰に著しい負担がかかるためです。

指針は、本人が座位を保てるならスライディングボード等、立位を保てるならスタンディングマシーン等の使用も検討するとしています。福祉用具を積極的に使用することが、対策の柱の一つです。

福祉用具が使えず、人力で抱え上げざるを得ない場合もあります。そのときは、身長差の少ない2名以上で作業するよう求めています。

02本人の力を生かし、無理な姿勢をなくす

指針は、本人が自分で歩けるか、立っていられるか、座っていられるかを踏まえ、残っている力と介助への協力度に合った方法を選ぶよう求めています。

本人ができることまで介助者が代わりにすると、本人の力を使う機会が減ります。第2章で学んだ自立支援の考え方は、移乗の場面でも同じです。

指針は、前かがみやひねりの姿勢を避けるため、ベッドの高さ調節やスライディングシート等の活用を挙げています。特にベッドのそばでの作業では、前かがみにならない高さまで電動で上がるベッドを使い、各自で高さを調整させるとしています。

03ボディメカニクス:力学の原理を体の使い方に生かす

ボディメカニクスとは、重心・支持基底面・てこなどの力学の原理を、人の体の動きに取り入れて応用する技術です。

介護福祉士養成の研究では、原則として、支持基底面を広くとる、重心を低くする、相手と自分の重心を近づける、大きな筋群を使うなどの8つが挙げられています。腰痛予防指針も、重い物を扱うときは体を対象物に近づけ、重心を低くする姿勢をとるよう求めています。

ただし、ボディメカニクスは道具の代わりではありません。指針の順番は、まず福祉用具で抱上げそのものをなくすことです。そのうえで、体の使い方で残る負担を減らします。

本人の状態指針が挙げる方法
全介助が必要リフト等を積極的に使用し、原則として人力で抱え上げない
座位を保てるスライディングボード等の使用も含めて検討する
立位を保てるスタンディングマシーン等の使用も含めて検討する
福祉用具が使えず、抱え上げざるを得ない身長差の少ない2名以上で作業する
本人の状態に合わせた移乗介助の方法(厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」平成25年改訂をもとに作成)

あなたの場合は?

床の重い荷物を持ち上げるとき、あなたは膝を伸ばしたまま前かがみになっていませんか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 腰痛予防対策指針:移乗などで、原則として人力による人の抱上げは行わせない。全介助ならリフト等
  2. 本人が座位・立位を保てるかなど、残っている力と協力度に合った方法を選ぶ
  3. ボディメカニクス:重心を低く、支持基底面を広く、相手に近づく。ただし福祉用具が先

TERMSこのレッスンの用語

ボディメカニクスBody mechanics

重心・支持基底面・てこ・モーメント・摩擦・慣性などの力学の原理を、人の体の構造に取り入れて応用する技術。

職場における腰痛予防対策指針Guidelines for prevention of low back pain in the workplace

厚生労働省が示す腰痛予防対策の指針。平成25年6月の改訂で、福祉・医療分野などの介護・看護作業全般が対象になった。

LESSON 5-1 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 「職場における腰痛予防対策指針」が、全介助が必要な人の移乗について示していることはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. リフト等を積極的に使い、原則として人力で抱え上げない
正解です。指針は、抱上げは腰に著しい負担がかかるため、原則として人力による人の抱上げは行わせないとしています。

Q2. ボディメカニクスの原則として、本文で挙げたものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 3. 相手と自分の重心を近づける
ここがポイントです。支持基底面は広く、重心は低く、相手と自分の重心は近づけます。

日常の場面で考える

Q3. あなたは施設の介護職です。座位は保てるけれど立つのは難しいJさんを、ベッドから車いすへ移します。指針に沿った考え方はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. スライディングボード等の使用も含めて検討する
惜しかった人も大丈夫です。指針は、座位を保てる人にはスライディングボード等の使用も含めて検討するとしています。本人の力を生かしつつ、抱上げをなくす方法です。

レッスン5-1はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第5章 生活支援技術 のレッスン一覧
  1. 5-1移動と移乗の介助
  2. 5-2食事の介助
  3. 5-3入浴と清潔の介助
  4. 5-4排泄の介助
  5. 5-5着替えと身じたく
  6. 5-6人生の最終段階の介護

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出典(3件)
  1. 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日改訂、別添)
  2. 厚生労働省 三重労働局「『職場における腰痛予防対策指針』の改訂について」
  3. 永田紀美子・青柳佳子「『ボディメカニクス』の習得状況からみた腰痛予防教育の現状と課題」目白大学短期大学部研究紀要 第50号(2014年)