HOME / ゼロから学ぶ介護福祉士 / 講座 / 第3章 社会の理解 / 高齢者虐待と権利擁護

第3章 社会の理解 ・ レッスン3-5

高齢者虐待とは?5つの種類と通報義務、権利擁護

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

利用者が家族からきつい言葉を浴びせられている。「家族の問題だから」と見て見ぬふりをしてよいと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン3-4から

Q1. 前のレッスンの復習です。障害者総合支援法の基本理念(第1条の2)に沿った考え方はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. どこで誰と生活するかを選ぶ機会が確保される
正解は「どこで誰と生活するかを選ぶ機会が確保される」です。基本理念は、社会の事物・制度・慣行・観念などの障壁を取り除くことも掲げています。

介護のことで困ったときの相談先

この講座は学習用で、個別のケースの判断はできません。家族の介護に困ったときや、高齢者への虐待かもしれないと思ったときは、次の公的な窓口に相談できます。確信がなくても相談できます。

命の危険があるときは110番や119番に連絡してください。出典: e-Gov法令検索「介護保険法」第115条の46、e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第7条・第21条

01高齢者虐待は、5つの種類に分けられる

高齢者虐待には、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5種類があります。

高齢者虐待防止法は、65歳以上の人を高齢者としています(第2条第1項)。虐待をする人は、家族など現に養護する養護者と、介護施設などで働く養介護施設従事者等の2つに分けられます。

第2条は虐待の行為を定めています。暴行を加える、著しい減食や長時間の放置、著しい暴言や拒絶的な対応、わいせつな行為、財産を不当に処分することなどです。一般に、身体的・介護等放棄・心理的・性的・経済的の5種類と呼ばれます。

厚生労働省の令和6年度の調査では、養護者による虐待の相談・通報は41,814件、虐待と判断された件数は17,133件でした。種別は身体的虐待が64.1%ともっとも多く、虐待者の続柄は息子が38.9%でもっとも多い結果です。

02重大な危険があれば、市町村に通報しなければならない

養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を見つけ、生命や身体に重大な危険があるときは、速やかに市町村に通報しなければなりません。

第7条第1項は、重大な危険がある場合の通報義務を定めています。それ以外の場合も、速やかに通報するよう努めなければなりません(同条第2項)。「虐待を受けたと思われる」段階で通報するので、確信までは求められていません。

守秘義務の規定は、この通報を妨げるものと解釈してはならないとされています(第7条第3項)。令和6年度の調査では、養護者による虐待の通報者は警察に次いで介護支援専門員が多く、24.4%でした。

施設の職員が自分の職場で虐待を見つけたときは、第21条で市町村への通報が義務づけられています。施設での虐待は、第12章で詳しく学びます。

03判断する力が不十分な人の権利を守る、成年後見制度

成年後見制度は、認知症などで判断する力が不十分な人に代わり、後見人などが財産管理や契約を支え、本人の権利を守る制度です。

民法は、判断する能力の程度に応じて、家庭裁判所が後見・保佐・補助を始める審判をすると定めています(第7条・第11条・第15条)。後見人には、本人の意思を尊重し、心身の状態と生活に配慮する義務があります(第858条)。

ほかに、本人が判断できるうちに、将来頼みたいことを契約で決めておく任意後見制度もあります。経済的虐待のように財産が狙われる場面では、こうした権利擁護のしくみが本人を守ります。

種類法律が定めるおもな行為割合
身体的虐待身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行64.1%
心理的虐待著しい暴言や著しく拒絶的な対応など、心に著しい傷を与える言動37.2%
介護等放棄著しい減食や長時間の放置など、養護を著しく怠ること19.7%
経済的虐待財産を不当に処分するなど、不当に財産上の利益を得ること16.4%
性的虐待わいせつな行為をする、またはさせること0.4%
高齢者虐待の5つの種類(高齢者虐待防止法第2条と、厚生労働省「令和6年度調査結果」の養護者による虐待の種別の割合をもとに作成。1つの事例に複数の種別がありうるため、合計は100%になりません)

あなたの場合は?

利用者の体のあざや、家族の強い口調に気づいたとき。あなたの職場では、まず誰に、どう報告することになっていますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 高齢者虐待は、身体的・介護等放棄・心理的・性的・経済的の5種類(第2条)
  2. 重大な危険があれば市町村への通報義務、それ以外も通報の努力義務。守秘義務は通報を妨げない(第7条)
  3. 成年後見制度(後見・保佐・補助と任意後見)で、判断する力が不十分な人の権利を守る

TERMSこのレッスンの用語

成年後見制度Adult guardianship system

精神上の障害で判断する能力が不十分な人について、家庭裁判所の審判で後見人・保佐人・補助人がつき、財産管理や契約を支える制度。

任意後見制度Voluntary guardianship system

本人があらかじめ選んだ任意後見人に、判断が心配になったときに代わりにしてもらいたいことを、契約で決めておく制度。

経済的虐待Financial abuse

高齢者の財産を不当に処分するなど、高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

LESSON 3-5 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 高齢者虐待防止法が定める虐待の種類に、含まれないものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 3. 宗教的虐待
正解です。5種類は、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待です。

Q2. 養護者による虐待を受けたと思われる高齢者の生命や身体に、重大な危険が生じているとき。発見した人の対応として正しいものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 速やかに市町村に通報しなければならない
ここがポイントです。第7条第1項は、重大な危険がある場合の通報を義務としています。守秘義務の規定は通報を妨げないとされています(同条第3項)。

日常の場面で考える

Q3. 訪問介護で入ったIさん宅で、Iさんが「同居の息子に年金を全部使われて、食べ物も買えない」と話しました。適切な対応はどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 経済的虐待の疑いとして事業所に報告し、市町村への通報につなげる
財産から不当に利益を得ることは経済的虐待に当たります。食べ物も買えない状態なら、介護等放棄も疑われます。一人で抱えず、事業所に報告し市町村への通報につなげます。

レッスン3-5はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第3章 社会の理解 のレッスン一覧
  1. 3-1介護保険のしくみ
  2. 3-2要介護認定とケアプラン
  3. 3-3地域包括支援センター
  4. 3-4障害者総合支援法
  5. 3-5高齢者虐待と権利擁護

講座の目次(全12章)へ

出典(4件)
  1. e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(第2条・第7条・第21条)
  2. 厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」報道発表資料(令和7年12月25日)
  3. e-Gov法令検索「民法」(第7条・第11条・第15条・第858条)
  4. 厚生労働省「成年後見はやわかり」成年後見制度の種類(法定後見と任意後見)