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第8章 認知症の理解 ・ レッスン8-4

パーソン・センタード・ケアとは?本人の視点に立つ認知症ケア

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

認知症が進んだ人は、自分のことを自分で決められないと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン8-3から

Q1. 厚生労働省のガイドラインで、BPSDへの対応としてまず検討するとされているものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 環境調整やケアの変更などの非薬物的な対応
正解は「環境調整やケアの変更などの非薬物的な対応」です。それでも改善しない場合にのみ、向精神薬の使用を検討します。

介護のことで困ったときの相談先

この講座は学習用で、個別のケースの判断はできません。家族の介護に困ったときや、高齢者への虐待かもしれないと思ったときは、次の公的な窓口に相談できます。確信がなくても相談できます。

命の危険があるときは110番や119番に連絡してください。出典: e-Gov法令検索「介護保険法」第115条の46、e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第7条・第21条

01パーソン・センタード・ケアは、「人」に目を向けるケア

パーソン・センタード・ケアとは、認知症の人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行う考え方です。

1980年代末の英国で、トム・キットウッドが提唱しました。当時の施設では、時間どおりにおむつ交換や入浴を進めることを優先する、流れ作業のようなケアが行われていました。

キットウッドは、見下されたり物のように扱われたりして尊厳が傷つくことが、状態の悪化に大きく影響していると気づきました。問題は職員個人ではなく、「どうせ何もわからない」と決めつける職場の風土にあるとしました。

02行動の背景には、病気以外の要因もある

認知症の人の行動や状態は、脳の障害だけでなく、性格、生活歴、健康状態、周りの人の関わり方などとの相互作用で現れます。

キットウッドは、脳の障害、性格傾向、生活歴、健康状態と感覚機能、その人を取り巻く社会心理の5つを挙げました。同じ程度の病気でも、人によって行動は違います。

たとえば、主婦として家族の食事を作ってきた女性が「家に帰りたい」と言うのは、食事の準備が気になるからかもしれません。生活歴を知ると、行動の意味が見えてきます。

前のレッスンで学んだBPSDも、この視点で背景を探ります。接し方しだいで、行動や症状は良くも悪くもなります。

03本人の意思を尊重する。意思決定支援の考え方

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインは、認知症の人には意思があり、意思決定能力があることを前提に、本人の視点に立って支援するよう求めています。

このガイドラインは平成29年度の事業をもとに策定され、2025(令和7)年3月に第2版になりました。食事・入浴・服の好みや外出なども、日常生活の意思決定支援の対象です。

言葉でうまく伝えられないときは、身振りや表情の変化も意思表示として読み取ります。本人の意思は変わることがあるため、繰り返し確かめます。

認知症基本法も、全ての認知症の人が自らの意思で暮らせるようにすることを、基本理念の1つ目に掲げています(第3条)。

要因例
脳の障害アルツハイマー病、脳血管障害など
性格傾向性格、困ったときの対処のしかた
生活歴育ってきた環境、仕事、趣味
健康状態・感覚機能これまでの病気、今の体調、視力・聴力
社会心理周りの人の見方や関わり方、環境
キットウッドが挙げた、認知症の人の行動や状態に影響する5つの要因(健康長寿ネット「パーソン・センタード・ケア」をもとに作成)

あなたの場合は?

あなたが毎日続けている習慣を1つ思い浮かべてください。それを理由も聞かれずにやめさせられたら、どんな気持ちになるでしょう?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. パーソン・センタード・ケアは、認知症の人を一人の「人」として尊重するケア(キットウッドが提唱)
  2. 行動の背景には、脳の障害・性格傾向・生活歴・健康状態と感覚機能・社会心理の5つの要因がある
  3. 意思決定支援は、本人に意思と意思決定能力があることが前提。身振りや表情も意思表示として読み取る

TERMSこのレッスンの用語

パーソン・センタード・ケアPerson-centred care

認知症の人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行う考え方。英国のトム・キットウッドが提唱した。

意思決定支援Supported decision-making

認知症の人が、持っている能力を最大限生かして、自らの意思に基づいた生活を送れるようにするための支援。

LESSON 8-4 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. パーソン・センタード・ケアを提唱した人物は誰でしょう?

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正解: 1. トム・キットウッド
正解は、英国の老年心理学者トム・キットウッドです。1980年代末に、認知症の人を一人の「人」として尊重するケアを提唱しました。

Q2. 厚生労働省の意思決定支援ガイドラインの考え方として、正しいものはどれでしょう?

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正解: 2. 認知症の症状にかかわらず、本人には意思があり、意思決定能力があることを前提にする
ここがポイントです。症状にかかわらず、本人に意思と意思決定能力があることを前提に支援します。意思は時間や状況で変わることがあるため、繰り返し確かめます。

日常の場面で考える

Q3. あなたは施設の介護職です。入浴の時間に、Sさんが「今日は入らない」と首を横に振りました。本人の視点に立った対応はどれでしょう?

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正解: 2. 理由や気持ちを聞き、時間を変えるなど、本人の意思を尊重した方法を一緒に考える
入浴の好みも、日常生活の意思決定支援の対象です。理由を聞き、本人の意思を尊重した方法を探します。意思は変わることがあるため、勧めるのをやめてしまうのではなく、繰り返し確かめます。

レッスン8-4はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第8章 認知症の理解 のレッスン一覧
  1. 8-1認知症とは
  2. 8-2認知症の原因となる病気
  3. 8-3中核症状とBPSD
  4. 8-4本人の視点に立った認知症ケア
  5. 8-5認知症の人の家族を支える

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出典(3件)
  1. 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)「パーソン・センタード・ケア」(2019年11月8日更新。キットウッドの提唱、5つの要因)
  2. 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」(令和7年3月)
  3. e-Gov法令検索「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(第3条 基本理念)