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第8章 認知症の理解 ・ レッスン8-3

認知症の中核症状とBPSDとは?記憶障害と行動・心理症状

約5分 ・ 公開日 2026-10-06

このレッスンの問い

認知症の人が急に大きな声を出したとき、その原因は「認知症だから」だけだと思いますか?

読む前に、答えを少しだけ予想してみてください。当たっていなくても大丈夫です。

前のレッスンの復習(1問)

本文に入る前に、前のレッスンを思い出してみましょう。

レッスン8-2から

Q1. できることとできないことが分かれる「まだら認知」や、急な悪化・変動が特徴とされる認知症はどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 血管性認知症
正解は「血管性認知症」です。脳梗塞や脳出血によって起こり、手足の麻痺を伴うこともあります。幻視が目立つのはレビー小体型認知症です。

介護のことで困ったときの相談先

この講座は学習用で、個別のケースの判断はできません。家族の介護に困ったときや、高齢者への虐待かもしれないと思ったときは、次の公的な窓口に相談できます。確信がなくても相談できます。

命の危険があるときは110番や119番に連絡してください。出典: e-Gov法令検索「介護保険法」第115条の46、e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第7条・第21条

01中核症状は、脳の働きの低下から直接起こる

中核症状とは、脳の細胞が死ぬなど脳の働きが低下することで直接起こる、記憶障害や見当識障害などの認知機能の障害です。

記憶障害では、さっき聞いたことやしたことを覚えにくくなります。子どもの頃の記憶など、昔のことは比較的保たれます。

見当識障害では、今がいつで、ここがどこかがわからなくなります。季節に合わない服を着る、家のトイレの場所がわからない、といったことが起こります。

ほかに、理解・判断力の低下や、段取りよく物事を進められない実行機能障害があります。言葉の障害(失語)や、失行・失認も中核症状です。

02BPSDは、性格や環境、体調などが影響して現れる

行動・心理症状(BPSD)とは、中核症状に本人の性格や環境などが影響して現れる、妄想・抑うつ・興奮・不眠・幻覚などの症状です。

厚生労働省のガイドライン(第3版)では、認知症の人の約60〜90%が何らかのBPSDを経験するとされています。BPSDは介護の負担を増やし、本人と家族の生活の質を下げます。

BPSDには、脳の変化だけでなく、生活環境や人間関係、本人の性格など多くの要因が関わります。痛みや便秘、脱水、感染症、見えにくさや聞こえにくさが、BPSDに似た症状を起こすこともあります。

03対応の第一歩は、薬より環境とケアの見直し

BPSDへの対応では、環境の調整やケアの変更などの非薬物的な対応を先に行い、薬は改善しない場合に検討します。

ガイドラインは、まず環境調整やケアの変更、心理的な働きかけなどを家族や介護スタッフと検討するよう示しています。それでも改善しない場合にのみ、向精神薬の使用を検討します。

介護職にできるのは、症状の背景を探ることです。いつ、どこで、誰といるときに起きたか。体調や環境の変化はなかったかを記録し、チームで共有します。

たとえば落ち着かずに歩き回る様子が、便秘や痛みの不快感から来ていることもあります。本人は、言葉にできない不快感を行動で表しているのかもしれません。

区分起こり方主な例
中核症状脳の働きの低下から直接起こる記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失語、失行・失認
行動・心理症状(BPSD)中核症状に、性格・環境・体調・人間関係などが影響して現れる妄想、抑うつ、興奮、不眠、幻覚、意欲の低下
中核症状と行動・心理症状(BPSD)の違い(健康長寿ネット「認知症の中核症状」、厚生労働省のガイドラインをもとに作成)

あなたの場合は?

もしあなたが体の不快感を言葉で伝えられないとしたら、どんな行動で周りに知らせようとすると思いますか?

答えを書く必要はありません。少し思い浮かべるだけで、記憶に残りやすくなります。

覚えるのはこの3つ

  1. 中核症状は脳の働きの低下から直接起こる(記憶障害・見当識障害・実行機能障害など)
  2. BPSDは中核症状に性格・環境・体調などが影響して現れる。約60〜90%の人が経験するとされる
  3. BPSDへの対応は、環境調整やケアの変更などの非薬物的な対応が第一選択

TERMSこのレッスンの用語

中核症状Core symptoms of dementia

脳の働きの低下から直接起こる認知機能の障害。記憶障害、見当識障害、実行機能障害などがある。

行動・心理症状(BPSD)Behavioral and psychological symptoms of dementia

中核症状に性格や環境、体調などが影響して現れる、妄想・抑うつ・興奮・不眠・幻覚などの症状。

見当識障害Disorientation

今がいつで、ここがどこか、自分と周りの人との関係などがわからなくなる障害。中核症状の1つ。

LESSON 8-3 の確認

確認問題(全3問)

本文を見ずに答えてみましょう。思い出そうとすることが、いちばんの復習になります。

Q1. 認知症の中核症状にあたるものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 1. 見当識障害
正解は「見当識障害」です。今がいつで、ここがどこかがわからなくなる障害で、脳の働きの低下から直接起こります。抑うつや不眠は、行動・心理症状(BPSD)にあたります。

Q2. 厚生労働省のガイドライン(第3版)が示す、BPSDへの対応の原則として正しいものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. まず環境調整やケアの変更などの非薬物的な対応を検討する
ここがポイントです。非薬物的な対応が第一選択で、それでも改善しない場合にのみ向精神薬の使用を検討します。BPSDには環境や人間関係、体調など多くの要因が関わります。

日常の場面で考える

Q3. あなたは施設の介護職です。ふだん穏やかなHさんが、この2日ほど夜に大きな声を出し、おなかをさすっています。最初の対応として適切なものはどれでしょう?

答えを見る

正解: 2. 排便の状況や体調の変化を確かめて記録し、看護職に伝える
便秘や痛みなどの不快感が、BPSDに似た症状を起こすことがあります。「認知症だから」と決めつけず、体調や環境の変化を確かめ、チームで共有します。

レッスン8-3はここまでです

迷った問題は、その見出しの本文を読み直してから次に進みましょう。間違えた問題は復習ページに自動で入ります。

第8章 認知症の理解 のレッスン一覧
  1. 8-1認知症とは
  2. 8-2認知症の原因となる病気
  3. 8-3中核症状とBPSD
  4. 8-4本人の視点に立った認知症ケア
  5. 8-5認知症の人の家族を支える

講座の目次(全12章)へ

出典(3件)
  1. 健康長寿ネット「認知症の中核症状」(2019年11月8日更新。中核症状と周辺症状、記憶障害・見当識障害・実行機能障害など)
  2. 厚生労働省「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」(令和6年度厚生労働科学特別研究事業。約60〜90%がBPSDを経験、非薬物療法が第一選択、BPSD様症状を起こし得る要因)
  3. 厚生労働省「認知症関連ガイドラインについて」